あかね雲
不思議な世界行ったり来たり???
もうひとつの神話 シバ神 2
翌朝、元気を取り戻した若者は、意を決したように岩山を登り始めました。
途中で何度か休みをとりながらも、鍛え上げられた若者の体は、上へ上へと
グングン登り続けます。

どのくらい登ったのでしょうか、いきなり目の前に土の広場が現れました。
木も草も何もありません。ただ、茶色い土が広がるばかりです。

「ここで良いのか。
 何も無い、ここで良いのか・・・。」

若者は自らに問いかけるように繰り返し、頷くとひざまずいて祈りの言葉を
口にします。若者の声は澄んでおり、朗々と響き渡り広がっていきます。

まぶしく照りつける日差しの中、若者は祈り続けます。
自分の心の中にある全てを伝えるように、多くの人々の心にある願いを、
全て伝えるように、若者は祈り続けます。

いきなり、一陣の風が舞い立ちました。
若者は祈りをやめ、風に巻き上げられる土を呆然と見つめます。
やがて風がやみ、土がおさまると、そこには厳しい顔つきをした、
荒々しい姿の男神の姿がありました。

若者は両手を投げ出し、額を土にこすりつけます。

「シ・・・シバの神様であられますか!」

『我のことを、シバの神と言うか。』

「はい、私たち人間の前では、力強く怖ろしく尊いシバの神様であられます!」

『何用あって、ここへ来た?』

射すくめるような鋭いシバ神の視線に合って、若者はすくみあがりそうになる、
我と我が身を励ましながら、訪れた用件を話し始めました。

「私はこの国を治める、王の息子でございます。
 私の家系は先祖から連綿と続き、この国を治めてまいりました。
 良き民人に恵まれ、母なる川は人と領土を潤し、人としての悩み苦しみは
 ありましても、笑顔の広がる国でございました。
 それが私の祖父の代から、だんだんと人の心が変わってまいりました。
 助け合っていたものが、己の欲にのみ熱心になるようになり、助けるどころか
 蹴り落とすことまで始めました。」

一息つくと、若者はまたシバ神に向けて言葉を繋ぎます。

「親しき者たち仲良き者たちの間に割って入っては、その中を裂きます。
 信じる者たちには、疑心暗鬼を植えつけます。
 仕事に励んでいた者たちには、怠けることを教え進めます。
 築く喜びよりも、壊す面白さを教えます。
 祖父も父も長く続いてきた国を大切に思い、何とか人々の心を蘇らせようと、
 心をくだき方策を練り、気付きを与えようと、目を覚まさせようと必死に
 動き続けてきました。
 しかし、もう人の動きではどうしようもないところまで、来てしまいました。
 こうなってはシバの神様におすがりするしかないと思い極め、こうして私が
 ここまでお願いにまいったのでございます。
 どうか、どうか、私たちの国と民をお助け下さい!お守り下さい!」

若者は必死に語り、助力を請うてきます。
若者の言葉を黙って聞き、じっと見ていたシバ神は深い息をつきました。



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