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あかね雲 〜生きる意味〜
不思議な世界行ったり来たり???
ポセイドン ?
陽の光を受けて波頭がキラキラ光る大海原を、木をくり抜いて造った小舟を真剣に漕ぐ、
ひとりの逞しい若者がいます。
黒い髪には軽くウェーブがかかり、褐色の肌は汗にぬれています。
船の中には幾つかの果物と、水の入った瓶が置いてあります。

若者は何日間を漕ぎ続け、どのくらいの海を渡ってきたのでしょうか。
初めは山と積まれていた果物も残りは少なくなり、瓶の中の水もわずかになっています。
精悍な若者の顔にも、さすがに疲労の色が濃く見えます。

見渡す限りの海に囲まれ、若者はいつしか方向感覚を失いそうになっていました。
太陽と月と星により、わずかに自分が南に向かっていることが分かります。

この海の先には何があるのか、探しているものに出会えるのか。
はたして、本当にその存在はあるものなのか・・・。

若者の疲労が濃くなるだけ、疑問や不安が首をもたげてきます。
希望に満ちあふれ、自信を持って海に漕ぎだした日のことが、若者の心に去来します。
若者の漕ぐ手を止めさせないのは、自分の帰りを待つ多くの人々の、期待に満ちた瞳だけでした。

月が出て、星がくっきりと見える夜でした。
今では果物もなくなり、わずかの水だけが若者の命を長らえさせています。
海は不思議と凪いでおり、船端をかすめるような波の音が、かすかに聞こえるだけです。

若者の耳に、誰かが遠くから呼びかけているのが聞こえてきます。
若者は自分の耳を疑いました。

周りは海、何もない、誰が自分を呼ぶというのでしょうか。
若者は目を閉じたまま、自分が死んだと思いました。

死の世界から、呼びかけられているのだと思いました。
船が少し揺れます。
若者は、自分の体から魂が離れていくのだと思い、じっとしていました。
船が大きく揺れて波がしぶき、水が若者の腕にかかります。

若者は驚いて飛び起きました。
「な・・・なんだ?」
自分の体に手を当てると、温かさを感じます。
月明かりを頼りに、若者は自分の手足があり体があり、船があり海があるのを確認しました。

グルッと周囲を見回した若者は、波の上におぼろに光るものを見つけました。
光るものは徐々に近づいてきます。それを見ながら、若者は自分の中に何も恐怖がない
ことに気づき、もしや・・・と希望がきざすのを感じました。

『我に用があって、ここまで参ったのであろう。
 おまえの勇気と、皆を思う心根は分かった。
 言葉にして、我に伝えよ。
 さすれば、我のできることはしよう。』

おぼろな光は薄く人の顔かたちをとりながら、若者を包み込むように話します。

「ありがとうございます!
 ポセイドンの神に会え・・・と、神託を賜りました。
 私の妹が嫁にいき、身籠もりました。
 私たち家族と、妹の夫の家族は皆で大喜びをしました。
 家族が増える、新しい命が誕生をする、それは皆の希望でもありました。
 妹が身籠もって5ヶ月になった時、海の底から一人の薄気味の悪い男が現れました。
 そして、こう言うのです。」

 『遙かな昔、我はこの女と約束をした。 
  この女はその昔には、神に仕える巫女であったが・・・。
  海が荒れて村の男どもが漁から帰って来られぬようになった。
  その時に、この女が我に懇願をしたのだ。
  男たちを無事に戻してほしい、そうすれば自分の命を我に捧げると。
  我は女の命の代わりに、生まれる子供の命を請うた。
  しかし、巫女は子を成してはならぬ、他の者の子をと言うと、それはできないという。
  では転生をしたのち子を産み、必ず己の子供を我に捧げるという。
  我はそれを待つことにした。
  その女の願いを聞き入れ、海を鎮め漁に出ていた村の男どもを、無事に岸に戻したのだ。
  巫女は転生をして、この女になった。
  我は約束通りに、身籠もった子供をもらいに来た。
  生まれてからで良いが、今から我に渡す準備をしておくが良い。』 
 
「そう言うと、男は海の中に消えました。
 私たちは、すっかり驚いてしまいました。
 母は心痛のあまり寝込むし、妹は子供を産むのを怖がるようになりました。
 無理もありません。
 しかし、産むのが怖いと言っても、お腹の中で子供は順調に育っています。
 妹を助け、子供も無事に生まれるように、家族皆で祈り続けました。
 そして、私が神託を受け、ポセイドンの神に会って救って下さるように、
 お願いをする為に、海に漕ぎだしたのです。
 お願いです、どうぞ、妹をお腹の子供を、私たちの家族を救って下さい!」

若者はそう言うと船の底に座り、深々とお辞儀をしました。



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この記事に対するコメント
質問です
日本神話や今回のようなお話を書かれている時は
その神様から依頼があって記事になさっているのでしょうか?
あかね雲さんが書くことで、私たちが神話の世界を身近に感じることが
出来るようにする為なのですかね。

今日は妖怪のお話ではないのですが、
中学時代からの友人が妖怪の世界に魅了され、版画を長年やっています。
鬼太郎の映画も公開されますね。ではでは…

http://blue1984.hp.infoseek.co.jp/
【2007/04/22 01:15】 URL | maki #KFT6j.U6 [ 編集]

makiさん
「もうひとつの神話」に関しては、その方が直接ビジョンを送ってきます。
人間の都合により作られた神話が多く、ご自分たちの過ごしてきたことを
書いてほしいということです。
楽しんでいただけたら、幸いです。

妖怪の世界を版画にですか、ステキですね!
いつか機会があったら、見せていただきたいと思います。
【2007/04/22 22:29】 URL | あかね雲 #- [ 編集]


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